新しい生活への期待に胸を膨らませる引っ越し。しかし、その方位がご自身の運気に良くない影響を与えてしまう「凶方位」であると知ってしまったとき、その期待は大きな不安に変わってしまいますよね。
特に、お仕事の都合やご家族の事情で引っ越しの時期や、場所を自由に選べない場合にはどうしようもない無力感に悩んでしまう方も少なくありません。
しかしご安心ください。たとえ凶方位への引っ越しが避けられない場合でも、古来より伝わる知恵や日々の暮らしの中での少しの工夫によって、その影響を和らげ運気を良い方向へと導く方法は確かに存在するのです。
この記事では、そんな凶方位への引っ越しに関する皆様の不安を解消するために、その基本的な考え方から具体的な対策、そして心の持ち方まで、専門家の視点から解説していきます。
引っ越してはいけない方位・方角とは?
そもそも、引っ越しにおいて「良い方位」や「悪い方位」とはどのように決まるのでしょうか。
その根底には、東洋の伝統的な占術である「九星気学」に基づいた方位学の考え方があります。
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凶方位と吉方位はどうやって決まる?
九星気学では、人はみな生まれた年によって「一白水星」から「九紫火星」までの、9つの「本命星」という固有の星の特性をもっていると考えられています。
この九つの星は空に浮かぶ、天体としての星ではなく、地球を構成するエネルギー(気)を「星」という言葉で象徴しています。このエネルギーは、年・月・日ごとに各方位を巡っており、その配置は「方位盤(ほういばん)」または「遁甲盤(とんこうばん)」という盤で示されます。
年の方位盤を「年盤」、月の方位盤を「月盤」、日の方位盤を「日盤」と呼んで区別します。
ご自身の本命星と、引っ越しをする年や月の方位盤を照らし合わせ、九星の相性、方位の持つ意味を読み解くことで、「自分にとって、良いエネルギーが流れている方位=吉方位」と「悪いエネルギーが流れている方位=凶方位」を導き出すのです。
凶方位と吉方位は変化する
重要なのは、「吉方位と凶方位は決して固定的なものではない」ということです。 地球が自転・公転をし続け、黒潮の流れが変わるように、宇宙のエネルギーは常に動き続けているため、方位盤の星の配置も年ごと、月ごと、そして日ごとに刻々と変化していきます。
つまり、「去年はAさんにとって東が吉方位だったけれど、今年は凶方位に変わる」といったことが起こりうるのです。 そのため、引っ越しや旅行など大きな移動を計画する際には、引っ越しをする「年」と「月」の両方の盤を考慮して吉凶を判断する必要があります。
凶方位の種類
方位学には、全ての人にとって共通して避けるべきとされる、特に強い凶作用を持つ方位が存在します。
ここでは、その代表的な5つの凶方位について解説します。
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暗剣殺(あんけんさつ)
暗剣殺は、その年の「五黄殺」という最も強い凶方位の正反対に位置する方位です。
その名の通り、まるで「暗闇から、突然剣で斬りつけられる」ような予測不能な災難に見舞われやすい、とされています。
暗剣殺の影響
暗剣殺の作用は、主に他動的な自分に非がない形で降りかかってくるトラブルとして現れるのが特徴です。
例えば、交通事故に巻き込まれたり、信頼していた人から裏切られたり、あるいは盗難の被害に遭うといった事象です。自分自身がどんなに注意深く生活していても、外部から予期せぬ形で災いがもたらされる可能性があるとされています。
五黄殺(ごおうさつ)
九星気学における、最強の凶作用を持つとされるのがこの五黄殺です。九星の中心である「五黄土星」が、その年に巡る方位を指し、この星が持つ「腐敗」「破壊」「自滅」といった強力な負のエネルギーに満ちているとされています。
五黄殺の影響
五黄殺の作用は暗剣殺とは対照的に、主に自分自身の判断ミスや行動が原因となる自滅的な形で現れるのが特徴です。例えば、自らの不注意による病気や怪我、あるいは事業の失敗、家庭内の不和など、じわじわと内側から物事が腐敗し崩壊していくような困難な状況を招きやすいといわれています。
歳破(さいは)
歳破は、その年の干支(十二支)が位置する方位のちょうど正反対に位置する方位です。物事が「破れる」という、強い象意を持っています。
歳破の影響
この方位へ移動すると、これまで順調に進んでいた物事がことごとく破綻しやすくなるとされています。
例えば、まとまりかけていた商談が土壇場で破談になったり、大切な人との人間関係に亀裂が入ったり、あるいは計画していた約束事がキャンセルになるといった、「破れ」に関するあらゆるトラブルを引き寄せやすい、とされています。
本命殺(ほんめいさつ)
これは、ご自身の生まれ年から導き出される「本命星」が、その年に巡っている方位の、正反対に位置する方位です。
全ての人に共通する凶方位ではなく、個人に特有の凶方位となります。
本命殺の影響
本命殺の作用は主に、ご自身の「肉体的な健康」に対して、悪影響を及ぼしやすいとされています。
例えば、病気にかかりやすくなったり、怪我を負いやすい、あるいは持病が悪化するといった身体的なトラブルです。
自ら健康を損なうような方位へ向かっていくことになるため、できる限り避けるべき方位とされています。
本命的殺(ほんめいてきさつ)
本命的殺は、「本命殺」の正反対に位置する方位であり、こちらも個人に特有の凶方位です。
本命的殺の影響
本命的殺の作用は、肉体的なダメージをもたらす本命殺とは対照的に、主にご自身の「精神的な健康」に対して悪影響を及ぼしやすいとされています。
例えば、メンタルの不調に陥りやすくなったり、対人関係での精神的なストレスが増えたり、あるいは仕事での思いがけないミスが増えるいった事象です。
精神的なダメージは、やがて肉体的な不調にも繋がるため、こちらも注意が必要な方位です。
凶方位に引っ越すとどうなる?
では、もしこうした凶方位へ引っ越してしまった場合、私たちの運気には具体的にどのような影響が現れるのでしょうか。
方位学では、引っ越しのような大きな移動はその土地の「気」を体内に大きく取り込む行為であると考えられています。そのため、凶方位に引っ越すと、上記の凶方位の持つネガティブなエネルギーの影響を長期間にわたって受け続けることになるとされています。
その結果として、病気や怪我、事故といった健康面でのトラブルや、仕事の失敗や失業、人間関係の悪化といった社会的な面での不運、そして家庭内の不和や離別といった家庭面での問題など、人生のあらゆる側面において様々な困難や障害が現れやすくなるといわれています。
もちろん、これは必ずそうなるというわけではありません。しかし、物事がなぜかうまくいかない、悪い方向へと進みがちな逆風の強い環境に身を置くことになると考えることができます。
凶方位に引っ越した場合・引っ越す場合の対策方法
仕事の都合などでどうしても凶方位への引っ越しを避けられない。そんな場合でもその凶作用から身を守り、影響を最小限に食い止めるための古来より伝わるいくつかの「知恵」が存在します。
方違えする
「方違え(かたたがえ)」とは、凶方位の持つ悪い気を直接受けないようにするため、最も伝統的で効果的な対策方法です。
その手順は、現在の住まいから見て「吉方位」となる場所に、一時的にホテルやウィークリーマンション、あるいは友人宅などを仮住まいとします。
例えば、東に引っ越したいのに凶である場合、一度北や東北方面に仮住まいを構えることで、引っ越し先を南東や南方向へ変えられます。仮住まいには「眠るだけ」だけでも構いません。
そこで一定期間を過ごし、一度、良い気を取り込みます。
そして、その仮住まいから見て最終的な目的地が吉方位、あるいは凶方位ではない普通の方位となるタイミングで引っ越しをするというものです。
この仮住まいに寝泊りする期間は、最低でも「60日」。帰る時間が遅くなったりもするので、用心のためには「75日」。念には念を入れるなら「120日」が必要となります。
このように、目的地に直接入るのではなく、一度別の方位を経由することで、凶作用を避けるという考え方です。手間と費用はかかりますが、最も確実な対策の一つとされています。

寝床違えする
方違えをより簡略的にしたものが「寝床違え」です。これは新居に引っ越した後
「新居内で寝泊まりする部屋を変える」
ことで、引っ越しをしたとみなす方法です。
ただこの方法は、紹介をしておりますが、ほとんどの場合、凶方位の引っ越しの方が強くなってしまいます。本当に「ちょっとだけ」凶方位の効果を薄めるものだとお考え下さい。
また、寝室を変えるとか、ベッドの位置を変えてしまうと、今度は
「家相・風水から見て凶の家になる」
場合があります。そうなってしまうともっと悪くなってしまうので、寝床違えは本当に「参考までに」ご検討ください。
方位除け・八方除けをする
凶方位への移動が避けられない場合には、神社の力を借りるという方法もあります。それが「方位除け」や「八方除け」のご祈祷です。
これは、ご自身の星回りが良くないことや、悪い方位へ移動することによって生じる様々な災厄から身を守ってくださるよう、神様にお願いしご加護をいただくための日本の伝統的な儀式です。
特に、方位除けで有名な専門の神社(例えば神奈川県の寒川神社や埼玉県の三峯神社、あるいは各地にある「八方除」を祀る神社など)でご家族揃って正式なご祈祷を受けると、神様のお力を借りることができ、心の不安が大きく和らぎ、清々しい気持ちで新生活をスタートさせることができるでしょう。
御祈祷を受けるのは、引っ越し前、引っ越し後のどちらでも構いません。引っ越し前なら
「これから凶方位に行く家族が守られますように」
引っ越し後に行くならば
「凶方位の影響から家族が守られますように」
と祈ると良いでしょう。
神社など、パワースポットでお祈りをする時の心構えなどについては、下記記事をご覧ください。
パワースポット・神社・仏閣に行ってはいけない人とは? 危険な場所の特徴も解説
家払いを行う
他には新居そのものをお清めする「家払い(やばらい)」を行うのも一つの対策です。これは、新しい住まいに悪い気が溜まらないように、その土地の神様にこれからお世話になるご挨拶をするといった意味合いを持つ儀式です。
本来は入居前に行うものですが、ご予定もあると思うので、専門の神職の方にご相談なさってください。
専門の神職の方にお願いして祝詞をあげてもらうのが最も丁寧な形ですが、ご自身で簡易的に行うことも可能です。家の全ての部屋の窓を開け放ち、空気を入れ替え、隅々まで丁寧に掃除をします。そして、玄関や水回り、各部屋の四隅などにお清めの「盛り塩」を置いたり、お酒やお米をお供えしたりすることで、家全体を清浄な空間にするのです。
お酒やお米は1日で、盛り塩は1~2週間したら回収して、捨ててください。
その後は部屋を定期的に掃除し、整理整頓し、綺麗な状態を保つようにすることで、家の気を良くしておくことで、凶方位の影響があっても、それ以上悪くならないようにする方法です。
好転反応を得るためにやるべきことは?
凶方位へ引っ越してしまった場合、そのマイナスの影響をプラスへと転じさせていくための積極的な開運行動をご紹介します。
吉方旅行をする
方位学の効果の強さは、移動した「距離」と滞在した「時間」に比例すると考えられています。
つまり、凶方位へ長く移り住んだことによって取り込んでしまったマイナスのエネルギーを中和するためには、それと「同等かそれ以上のプラスのエネルギー」をご自身の体内に取り込む必要があるのです。
そのための最も効果的な方法が、ご自身の「吉方位」へ移動する「吉方旅行(祐気取り)」を行う事です。
理想では、引っ越した時より3倍以上になる場所へ移動することとされています。ですが、これがなかなか難しいのです。
例えば、引っ越し先への「距離」が10キロだとします。引っ越しの日数は諸説ありますが、ここでは「360日」説を採用します。
そうすると凶方効果は「10×360=3600」となります。
これを打ち消すには、1000キロ離れた場所に、最低でも4泊。理想の3倍以上にするなら12泊が必要になります。
1000キロとは、東京ー沖縄間の距離になります。これぐらいしないと凶方位での引っ越しを打ち消すのが難しいのです。
【関連記事】吉方位旅行は一泊二日でもよい? 旅行中に意識することとは
打ち消しきれなくてもいいから、吉方旅行(祐気取り)をしよう
こういわれると、打ち消せない吉方旅行をしても意味がないと思われるかもしれません。
ですが、意味がないという事はありません。確かに凶方位の引っ越し効果には勝てないかもしれませんが、本人が凶方位の効果に立ち向かう力を得るために、吉方旅行はお勧めいたします。
実例として、記事を監修している松平兼幸は、自ら凶方位に行き、凶方位の強さを確かめました。
そしてその後吉方旅行に行き、どれだけフォローできるかを確かめました。
結果、凶方位の影響は出てしまいますが、吉方旅行の効果は改善する助けになりました。
徳を積む生き方をする
上記の通り、凶方位の引っ越しの強さを打ち消すには、かなり大変な旅行が必要になります。
なので、打ち消すとまでいかなくても、ちょっとした対処が出来る程度の吉方旅行をして、残りは自分で何とかするという方法があります。
凶方位に行ったとしても、全てがダメになってしまうという事はありません。事実、凶方位に引っ越した後でも、成果を上げている人は多くいらっしゃいます。
凶方位の影響は、一番強く出た場合、その人の運気を「三割減」すると言われています。三割減したとしても、元の運気が強かったり、そもそも行いが正しくて、三割減でもびくともしない「徳」を積んでいる人なら、凶方位に行ったとしても大丈夫なのです。
と言っても「できる」と「やれる」は違う事で、言われたからすぐできるというのは難しいです。そもそも、どういう生き方が徳を積む生き方なのかから考えないといけないかもしれません。
それでも、継続は力なりで、少しずつ前に進むのが良いのです。この前に進む意思や体力・気力を助けてくれるのか、吉方旅行です。
引っ越しの方位を気にしないのも1つの解決策
ここまで様々な対策方法をご紹介してきましたが、最後にもう一つのシンプルで効果的な、言ってしまえば身もふたもない解決策をお伝えします。
それは「方位を気にしすぎない」ということです。
もちろん、方位学は先人たちが遺してくれた素晴らしい知恵であり、活用できるのであればそれに越したことはありません。
しかし、それに過度に縛られ「凶方位だからきっと悪いことが起こる」と毎日不安な気持ちで過ごしていては、そのネガティブな思い込み自体が良くない現実を引き寄せてしまう可能性があります。
できる限りの対策をし、あとは「私は大丈夫」「きっと良くなる」とご自身の運を信じ、前向きな気持ちで新しい生活を楽しむこと。
ご家族の笑顔、日々の暮らしへの感謝、そして未来への希望といったポジティブなエネルギーをもって生きる事こそが、どんな凶作用をも跳ね返す最強の「開運法」であり「徳を積む生き方」なのです。
吉方位に引っ越せば良いことが起こるの?
では、吉方位へ引っ越しをすれば必ず良いことばかりが起こるのでしょうか。
吉方位の効果は人それぞれ
吉方位の効果の現れ方は、その人のそれまでの生き方や徳の積み方によって人それぞれ異なるといわれています。
と言うのも、『凶方位の影響は、一番強く出た場合、その人の運気を「三割減」すると言われています』とお話ししたように、吉方位の影響も同様、一番強く出た場合、その人の運気を「三割増」すると言われています。
三割増しで成功できるぐらい、日頃から努力を積み重ね、真摯に生きている人のもとへは、その努力が一気に花開くような大きな幸運がもたらされるでしょう。
一方で、これまであまり努力をしてこなかった人の場合は、すぐに宝くじが当たるといったような棚ぼた的な幸運が訪れるわけではありません。まずは、努力を続け、良いご縁に恵まれるといった幸運の「土台」を築くことが大切です。
例として、100点満点のテストで、毎回80点前後を取れる人と、30点前後の人がいたとします。
この二人が吉方位に行き、3割増しとなったら、テストの点数は80点の人なら90~100点の間になるでしょう。
30点前後の人は、3割増しになったとしても、最高で40点になるかならないかぐらいです。100点まではまだ60点あり、遠い道のりに思えます。
しかし、吉方旅行の効果で、成長するスピードも3割増しになっています。ですから、ここから勉強して、50点、60点と成績をあげていくきっかけにするのが、正しい吉方旅行の使い方です。
重要なことは無事に引っ越しを終えること
方位の吉凶はもちろん大切ですが、それ以上に現実的な問題として、引っ越しという一大イベント、そして引っ越しが必要になった大本の理由を無事に終えることが何よりも重要です。
方位を気にするあまり、無理なスケジュールを組んだり準備がおろそかになっては元も子もありません。
例えば、海外の大学に留学が決まったのに、凶方位だから来年に行くという選択をしてしまうのはもったいない話です。
その他、海外に行く場合ならビザの申請とか、エスタの申請とか、そもそもパスポートが間に合わないとかをしてしまうと、吉方位も凶方位も関係ありません。
まずは、信頼できる引っ越し業者を選び、荷造りを計画的に進め、ご近所への挨拶をきちんと行うといった人としての当たり前の行いを丁寧に行うこと。引っ越し後、その土地の氏神様にあいさつに行くなど、誠実な姿勢こそが新しい土地での良い人間関係と、良い運気を引き寄せる一番の土台になるでしょう。
凶方位を意識しすぎず自分で運気を切り拓くことも大事
方位の吉凶は、私たちの人生に影響を与えるでしょう。しかし、それは決して私たちの運命を全て決定づけるような絶対的な力を持つものではありません。
最終的にご自身の人生を、そして運気を切り拓いていくのは他の誰でもないご自身の「心」と「行動」です。
この記事でご紹介した古来からの知恵を上手に活用し、どうか希望に満ちた素晴らしい新生活をスタートさせてください。